憧れの「エンジニアブーツ」は買いなのか

ワークブーツを嗜むと必ず目に入ってくるエンジニアブーツ。

エンジニアブーツという名称からはなんとなくかっこよさを感じますけど、その正体は、つま先にスチールが入っているいわゆる「安全靴」なんです。そのために重くて歩きづらいですし、紐無し靴でフィット感の調整ができないため(ベルトの調整はほとんど効果ない)、足に馴染むまでは靴擦れに悩ませることになります。

それでもなぜエンジニアブーツに人は惹かれてしまうのか。

それは単純に「カッコイイから」(笑)。

正体は安全靴とはいえ、全方位無骨な本革で形作られたミドルブーツというスタイルはこれだけ。それゆえの独特なエイジングと、エイジングとともにあんなに痛めつけていた自分の足に徐々に馴染んでいく実感も大きな魅力なのかなと思います。

トップ写真はレッドウィングの定番エンジニアブーツ2268。ブラッククロームで、ダメージを受けるとグレーの地が出てきます。茶芯のブラッククロンダイクが人気。先芯がプラスチックのものは軽く、抜かれているタイプはベックマンフラットボックスみたいなシャープな形状に経年変化してくれて、これも面白そうですよね。全部ほしい…!

チペワやホワイツブーツといった有名ワークブーツメーカーからもエンジニアブーツは展開されています。エンジニアブーツは高額な部類に入るので、それぞれ結構な価格になるのですが、レッドウィングのものが価格の割に品質も作りも良くて丈夫。コスパが良いので、初めてのエンジニアブーツとしてオススメです。

▲ヒールのアールがセクシー。エンジニアらしいポイントの一つ
▲激しい削れたダメージもエンジニアブーツにとってはたんなるディテールにすぎない
▲バイク用に使うとペダル操作による傷が入る。用途によって刻まれる傷は異なり、それがエンジニアブーツのエイジングの糧になる
▲こういう擦過傷をみて嬉しくなるのはエンジニアブーツの醍醐味
▲ケアの仕方はほかの革靴と一緒。オイルで渋く仕上げるもよし、靴クリームでドレッシーな雰囲気なのもよく似合う
▲ケアのときにはシューツリーを必ず入れましょう。おじさんとの約束
▲艷やかにしあがりました。カッコいい…!
▲ペダルの傷もほとんど目立たなったけど、傷はすっかり残っていて、その蓄積でエンジニアブーツはさらに凄みを増すのだ

革靴を長持ちさせてエイジングを楽しむシューケアのススメ

革靴を履いて3ヵ月〜半年くらい経つと、傷や汚れが気になってきます。
新品であればなおさら。履きジワもあまり刻まれてないので、ちょっと擦れて色が変わっただけで妙に目立ってモヤモヤするんですよね。

革靴を履く頻度が高まるのはおそらく冬なので、シューケアのタイミングは履く頻度が落ちだす夏手前か、そのまま保管して履き始める秋くらいがベター。新品の場合、履く頻度にもよるんですけど、だいたい3ヶ月位で履き皺も入って雰囲気がグッと変わるので、このタイミングで一度行っても良いと個人的には思っています。

今回シューケアを行なうのはレッドウィング877。ミドルブーツ&モックトゥの定番モデルですね。

この手のブーツはダメージも映えてそのままでもカッコいいんですけど、無駄な傷や汚れを拭うことで深みのあるエイジングを施すことができるんです。

1.靴紐を取る
▲何はなくとも靴紐は外す。これがあるとホコリが溜まっているベロ周りがケアできない
2.シューツリーを入れる
▲汎用品で良いのでシューツリーは入れよう。芯ができて形も固定されるので、扱いやすくなる
▲右がシューツリーを入れた状態。左に比べてシワも伸びて、この後施すクリーナーや靴クリームがより行き届くことになるので、シューツリーは非常に重要
3.馬毛ブラシでブラッシング
▲全体を馬毛ブラシでブラッシングするとともに、ベロ内側は念入りに。細かいゴミやホコリが堆積している。ホコリは革から油分を抜いていくと言われているので、こまめなブラッシングが革靴には重要
4.固く絞った濡れ雑巾で全体を拭う
▲水が大敵と言われている革に濡れ雑巾というのは賛否両論ありそうだが、有名な靴磨き店でも行っていたりするので採用している。水分は駄目と言われているが必要がないわけではないため、多少の水分補給と汚れ落としのために固く絞った濡れ雑巾で全体を拭き上げる
5.クリーナーで汚れを拭き取る
▲使うのはモゥブレイの水溶性クリーナー。安全性が高くて扱いやすく、汚れ落としとしての性能もいい定番品。もしワックスなどを除去したい場合は油性のクリーナーのほうが落としやすいが、銀面(革の表面)を荒らす危険性もある
▲強くこすらず、表面を撫でるようにして汚れを拭いていく。革によっては浸透して色が変わるときもあるが、大概は乾燥してもとに戻る
▲落とせる汚れと古い靴クリームも除去されたいわゆるスッピン状態。色濃く残る部分は擦れや傷による経年変化によるもの。これがワークブーツの風合いを高めてくれる
6.靴クリームを塗って磨く
▲靴クリームをペネレイトブラシで塗っていく。あくまで薄めに。多く塗布するとあとの処理が大変ですし、ホコリもつきやすくなる。靴クリームは好きなものでいいが、無色透明のナチュラルがもっとも使いやすい
▲豚毛ブラシで全体に擦り込んでいくと徐々にツヤが出てくる。力任せは良くないが、比較的強めに、磨いていく意識でブラッシングしていくと良い
▲きれいな布の切れ端で余分なクリームの除去をしながら拭き上げていく。ここは優しく。強くこすると擦過する。こだわる人はさらに馬毛ブラシや山羊ブラシで仕上げたりする
7.シューケア完了

完了したのがこちら。最初の擦れ汚れみたいなものは除去され、つややかで生き生きとした姿になりました。

ツヤを抑えたいならオイルにしてみたり、より艶を出したい人はそれに応じた靴クリームを用意して、自分好みの姿にしてみましょう。

あとは日々のブラッシングが重要。履いたあとは軽くでもブラッシングしておくと、末永く履き込むことが出来ますよ。

革靴は、履き出す前に“プレメンテ”しよう。

お目当ての革靴を買ったとき、嬉しさのあまり「ヤッター!」と履いてどこかへ走り出してしまいたいところですが、その前にまずは「プレメンテ」を行うことをオススメします。

本革は生き物の革をなめしたものなので、なにもしていなくても時間とともに少しずつ劣化していきます。靴が作られてから店頭に並び、アナタの手元に渡るまで、どれぐらいの時間が経っているわかりません。

その間に抜けた油分などを補填して革のコンディションをあげていくことで、当初の劣化の促進を防ぐことができ、革靴特有のエイジングを大いに楽しむことができます。

今回は、レッドウィング8111アイアンレンジャーとともにプレメンテを紹介します。
ワークブーツでもフォーマルな革靴でもやることは基本的に同じ。合革でもやっておいて損はないです(意味はなくても綺麗にはなります)。必要なものと手順を覚えて、今後革靴ライフに活かしてみてください。

1.靴紐をとりはずして、シューツリーを入れる
▲これから始めるプレメンテの邪魔になるので靴紐を取り外します
▲靴にはシューツリーを入れておきます。プレメンテ時に靴が扱いやすくなるし、革が伸びてブラッシングも行き届きやすくなります。保管時にも靴の中の湿気取りや型崩れ防止などに使えるので必ず用意しておきましょう
2.馬毛ブラシでホコリを落とす
▲保管中に付着したゴミやホコリを払っておきます
▲ベロの内側にホコリが溜まりやすいので、重点的に払おう
3.油分を補充する
▲プレメンテ時にはまずモゥブレイのデリケートクリームがオススメ。通常のオイルや靴クリームよりも浸透性が高いので、素早く革へ油分を補填できる。他の革製品とかにも使えたりするので、買っておいて損はない
▲小さいペネレイトブラシでデリケートクリームを薄く刷り込んでいきます。細かい部分にオイルやクリームを塗り込むのに便利なので用意しておこう。結構安い
▲デリケートクリームが塗り終わったら豚毛ブラシを使って革にデリケートクリームを押し込むようにブラッシングしていく
▲続いて靴クリームをデリケートクリームと同じ要領で塗っていく。多量に塗るとベタベタしてホコリもつきやすくなるので、薄く塗る。ワークブーツの場合は専用オイルでも良い。仕上がりの好みで選ぼう
▲ペネレイトブラシを使わず指で刷り込むのでもいい。体温に反応してクリームが溶け出し、革により油分が浸透する(ような気がする)。またクリームの視認性が高くなって量の調整もしやすい。これも好みの問題。その後はデリケートクリームのときと同じ、豚毛ブラシで刷り込むとだんだんツヤがでてくる
4.プレメンテ完了

以上の手順で、革にしっとりとしたツヤが出てきたらプレメンテ完了。
その後は履き終わった後に馬毛ブラシでブラッシングし日々ケアをしつつ、シーズン毎、ないし油分が抜けたなと思ったときに再度油分を充填しましょう。

定期的なメンテについては別途お届けしていきます。

失敗しないカメラ用三脚の選び方

特にここ数年でカメラを始めた人の三脚を持っている率って、極めて低いと思うんです。

まず、手ブレ補正機能が当たり前になってきました。
最近のミラーレス機で搭載されていないものってほぼ無いと思います。

三脚が使える場所がかなり減りましたよね。カメラマンのマナー問題であったり、景観を崩す可能性があったり、他の人の邪魔になって危ないなど。

というようなことで、物理的に三脚を使うシーンが減ったというのも大きな原因かと思います。

だからといって三脚が必要なくなったわけではありません。
構図を決め込んでそこから動かしたくないときには三脚が必ず必要です。
手ブレ補正にも限界があります。工夫すれば機種によってはシャッタースピード1秒でもブラさない写真を取れたりしますが、それが息遣いでもブレ出すマクロ撮影になると人のちからでは不可能。三脚を使わざるをえないでしょう。

自分にとっての三脚の役割とは? そこから三脚購入までの最適化を行おう

特定のシーンにおいて確実な撮影を行なうためにも三脚の重要性が理解できたと思います。
ではどういった三脚を買ったらいいのかを考えてみましょう。

例えば、いつあるかわからない三脚必須なシーンに対応するために三脚がほしいとします。
そうなると、どういう要素が三脚に必要でしょうか?
軽さ
コンパクトさ

荷物にならず、いつでも準備できる機動性として、このあたりが候補として挙がってくると思います。
すると以下の問題点が出てきます。
・軽さ→不安定
・コンパクトさ→構図の制限

構図を決め込んで動かさないために使う三脚が軽いと、構図がずれたりブレたりします。せっかく三脚を持ち運んたのに元も子もないですよね。
コンパクトにまとまる小さい三脚だと自分の目線よりも低くになって、三脚を使った撮影時とのギャップに悩まされるかもしれません。せめて自分の目線まで伸びてくれる三脚が良いなと思うと、コンパクトさは多少犠牲になるし、その三脚が軽いものだったとしたらより不安定な状態になってしまいます。

それらの懸念材料を高いレベルでクリアしてくれるものを選ぼうとすると、超高額な三脚だったりして、たまにしか使わない三脚にレンズ1本買える値段出すのって…なに!? って我に返って、また同じループにハマっていく…。

そう、お気付きのとおり、三脚選びって“無い物ねだり”の応酬なんです。コチラを立てればアチラが立たないの繰り返し。
しかもそこに“雲台”の要素が加わってくるからさらにややこしくなってきます。たとえ軽い三脚を買ったとしても、雲台を取り付けることで結局それなりの重量になったり、雲台を小さくて軽いものにすれば、操作性や安定性が犠牲になってきます。

だからこそ、いたずらに三脚を買おうとするのではなく、自分が普段行なう撮影内容と照らし合わせて、自分にとっての三脚の有用性を探る必要があります。それを見出せるまでは正直、三脚は必要ないと思います。堂々巡りになるだけなので。

定番のハスキー製三脚がやっぱり良い!

写真学校などでも購入するカメラマン定番中の定番であるハスキー製三脚は、三脚の役割と便利さとそれに伴う価格帯のバランスを高いレベルで保っています。

軽量タイプの三脚ではおなじみのカーボン製ではないですが、安価で重量のあるアルミ製三脚よりは軽いジュラルミン製となり、持ち運びは比較的楽なうえに、三脚としての安定性も確保。定評のある3WAY雲台が一体型になっているタイプはつなぎ目がない分さらに良い安定感が期待できます。

コンパクトさを求めてショートタイプ3段を選んだとしても、最長約170cm程度を確保。おおよそ目線の高さで撮影することができます。

▲黒くて無骨なハスキー製三脚。ショート3段タイプ。中古だが極めて綺麗。ハスキーは使い込む人が多いため中古はあまり出回らず、出回っていても傷が多いものがほとんど。それでも実用に支障がないくらい堅強だ。使い込まれたハスキー三脚がまたカッコいいのだ
▲エレベーター付きで、高さの調整が楽。ただし、ストッパのねじ込みを緩めた途端に下がってくるので、手放しで扱うのは非常に危険
▲雲台上面。向かって左斜したにレンズが来るように取り付ける。そのため、ボディが小さいミラーレスカメラに大口径レンズを取り付けた場合、雲台に干渉して、ズームやピントリングを動かせなくなったりする。縦位置グリップや一段高くしたりすることで解消できる

とはいえ、なんやかんやで新品で買おうとするとハスキーも結構高いので、根気よく中古品を探すのがオススメ。中古品だと程度にもよりますが半分以下の値段で買えたりします(写真のショート3段はメルカリで3万円)。

構造がずっと変わらないので基本的に修理が効くのもハスキーの大きな利点。カメラはどんどん買い変わるかもしれませんが、ハスキー三脚は一生の相棒として寄り添ってくれるでしょう。

そんなハスキー三脚にもローアングルが撮れないという最大の弱点があります(一応対応キットもあるけど、非常に使いづらい)。

もし、ローアングル撮影が必要になったら、その時は自分にとっての三脚の役割が見いだせたタイミングなので、最良の三脚に出会えるチャンスなのかもしれません。

5分で解説! 今さら聞けないカメラの話〜ローライフレックス2.8F〜

ドイツのカメラメーカー・ローライが手掛けた名機「ローライフレックス2.8F」です。

ローライといえば二眼レフ機。レンジファインダーや一眼レフ、ハッセルブラッドのようなスタイルの中判カメラを手掛けたりもしましたが、もっともヒットしたのは二眼レフシリーズで、そもそも世界で初めて二眼レフ機を手掛けたのがローライであり、ローライフレックスシリーズはローライを代表するシリーズかつ二眼レフの代名詞的存在となりました。

ローライフレックスシリーズは分類がわかりづらく、ローライコードや、4✕4フォーマットの通称“ベビーローライ”といった異端なタイプも含めると非常にややこしい。
とりあえず、“F”がつくものが後発にリリースされた最高峰モデルでレンズが異なる4種類(F値違いとメーカー違い)が存在すること。ローライコードは普及種で、ベビーローライは小さくて今は写真を撮ることがかなり難しいフォーマットのカメラであること。GXやFXといったローライフレックスはやたらと高いけど、本家本元が倒産した後にリリースされたカメラであること、などを知っておけばとりあえずOK。

ちなみに、ローライの創業者はフォクトレンダー出身。フォクトレンダーは、今でこそコシナが手掛けた、ツァイスより安価なドイツブランドレンズといったイメージを持たれてそうですが、歴史は長く、ライカ創業よりもはるか昔の18世紀から存在し、もともとオーストリアでドイツでもないんですけど、そんなフォクトレンダーの商標を一時ローライが所有していたことを考えると、なんか因縁めいた関係性が見えて面白いですよね。

フォクトレンダーについては、おいおいピックアップしていきます。

▲上部がファインダーのウェストレベル方式が主流。プリズムファインダーに差し替えれば一眼レフのように正像で写真が撮れます。ちなみにウェストレベルタイプのレフ機は上下は合っていても左右は逆像です。つまり、レフ機能が無い大判は上下も逆ということ。さらに補足するとレフ機のレフは光を反射する“レフレックス”の意味なので、ミラーを取ったミラーレス機は、レフ機ではありません。「ミラーレス一眼レフ機」は間違いなので、指摘するともれなく嫌な顔をされたりするのでご注意を
▲上がビューレンズで構図を決めるだけのレンズ。下が撮影を担うレンズです。これを一つにしたのが今の一眼レフというわけです。この機種のレンズはシュナイダー製クセノタールF2.8。主流はカールツァイス製プラナーF2.8で、玉数が多く人気も高いです。それぞれ75mmF3.5のタイプも存在します。画角が少し広く、レンズがちょっと暗くなった分軽くて扱いやすいです
▲正面2つのダイヤルを回すことで絞りとシャッタースピードを調整できます。数値は上部から両方とも確認可能
▲がらんどうとしてますが、フィルム装填のための精密なギミックを搭載しています
▲この金属のローラーの間にフィルムを通して装填することで、圧力を感知し、フィルムカウンターに合わせて巻き上げレバーが空回りする「オートマット機能」が搭載されているんです。1970年代に機械構造の力だけで実現させているのって、すごいことだとおもいませんか?
▲ビューレンズの上部が電池のいらない露出計。だめになっていることが多いけれど生きていたらラッキー。白い被せものはカバーではなく、ディフューザー。これをつけることで入射光に切り替えることができて、白や黒に露出径が引っ張られにくくなります
▲露出計のメーターは本体左側。ピントレバーと一体型になっています。結構割れていたりする部分
▲シャッターをチャージして押すと、見ために反して非常に静かな「カチ」って音がなるだけ。ローライフレックスはレンズシャッターなので、シャッターショックがありません(自分の挙動のブレくらい)。しっかり構えればスローシャッターも切れたりします

一周回ってセンセーショナルな見た目のローライフレックスは今もなお人気継続中。

かつてはカメラの主流を担っていた二眼レフ機なので、それに伴うギミックや、アクセサリー類もあったりするので、そういったものに注目を集めるのも面白いですよ。