5分で解説! 今さら聞けないカメラの話〜ハッセルブラッド500C/M〜

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スウェーデンのカメラメーカー・ハッセルブラッドを代表する中判カメラ「500C/M」。
1970年に、500Cのマイナーチェンジ機種として登場し、以後ハッセルブラッドを象徴するカメラとなります。

ちなみに、ハッセルブラッドといえば宇宙飛行に持ち込まれたカメラとして有名。
500C/Mの前身である500Cを改造したものを使い、良好な結果を生んだことからその後もハッセルブラッドのカメラが使用され、月面には撮影を終えたハッセルブラッドの特製カメラ12台が残されていると言われています(重量制限のためにフィルムマガジンだけ取り外して、レンズと本体はそのまま)。

500C/Mはシャッタースピード最高速1/500のレンズシャッター式。
それまで1600Fや1000Fといったもっとシャッタースピードを稼げる機種をすでに作ってはいたものの、こちらは今の主流のカメラと同様のフォーカルプレーンシャッター機で、当時のハッセルブラッドでもストロボとの同調速度が1/90ほど。ストロボとの同調性能が求められていた時代において、500Cおよび500CMシリーズは非常に重宝し、当時のプロカメラマンの憧れとも言うべき超高級カメラとして君臨しました(当時大卒初任給4万円の時代に、システムを組むと軽く100万超え)。

専用レンズ、専用ボディ、専用フィルムマガジンの3つに分かれている分、余裕のある構造となっていて丈夫。もしカメラが不調になってもいずれかを変えれば解決できたりするし、同じVシリーズであれば基本共用可能であったりと、システムとして非常に理にかなった構造になっているのが特徴。

シャッターチャージレバーやフォーカシングスクリーンを交換できるなど、自分に合ったカスタマイズができる構造にもなっていて、それによってさまざまなアクセサリーが存在するので、それらに注目するのも面白いです。

また、ハッセルブラッドならではのメカニカルな構造も魅力。今はあまり馴染みのないレンズシャッター式であるがゆえの独特な作法があったり、薄い金属製の仕切りの引き蓋が閉じているだけでシャッターがまったく切れなくなる仕組みは、中判カメラを知っている人にとっては当然ですが、知らない人には非常に衝撃的。
引き蓋を抜き忘れて、シャッターが切れなくてパニックになる経験はみんなが必ず通る道なので、ぜひそういったハッセルあるあるもぜひ体感してほしいですね。

▲Cレンズの80mmF2.8。絞りとシャッタースピードの設定をここで行うんですけど、連動して被写界深度の範囲(一番手前の赤い爪みたいなやつ)もうごいて示してくれます。数字は刻印されていて、これよりも新しいCFレンズになるとプリントになるので、作りを気にする人はCレンズ、性能重視ならCFレンズを選ぶと良いかもしれないですね
▲Cレンズの場合、絞りを変えたいときにはシャッタースピードのダイヤルを少し浮かす必要があって面倒。つまりは絞り優先みたいになっていて、そのまま回すと絞りとともにシャッタースピードも一緒に変わってしまいます。CFレンズではそのあたりもっとフレキシブルな構造になっています
▲噂の薄い金属製の仕切りである引き蓋。これが入っているとシャッターが切れません。これを抜けばシャッターは切れますが、今度はフィルムマガジンが外れなくなります。感光防止のためですね。ちなみに、手前の曲線状の赤いラインはフィルム残量のメモリ。新品状態だと白くなっていて、フィルムを送るごとに赤くなっていきます
▲フィルム送りとシャッターチャージを行うノブ。これは初期型の金属製。後期型はプラ製となり、速射性を高めたダイヤル式などいくつかバリエーションあり。質感重視で金属製をチョイスしています。ちなみに、シャッターをチャージしないと撮像が見えない構造になっています。シャッターがチャージされていない合図ですね

独特な構造ゆえの“お作法”を上げるとしたら…?

1.基本的に、すべてくっついたカメラの状態で動かしたほうが安全。
3つのブロックを連動させた構造なので、個々の状態で動かすと不具合が起こりやすいです。例えば、レンズ交換の最中にボディ側のシャッターを動かしてしまった場合、そのままレンズを取り付けようとすると破損する恐れがあります。両方ともシャッターがチャージ済みor切った状態で揃えて交換しましょう。おそらく一番神経を使うところ。
マガジン側でも撮影枚数が狂ったりしますが、そこまで大きな問題にはなりません。

2.スローシャッターは押しっぱなしにする
シャッターボタンの駆動と完全連動しているのはバックシャッターのみ。押したときのみレンズシャッターが駆動し、自動で開閉します。つまり、バックシャッターの開閉スピードがレンズシャッターを超えてくると、レンズシャッターが閉じる前にバックシャッターによって露出が切られてしまうことになります。シャッタースピードが1/60秒を下回るときは、押し続ける意識をしましょう。

3.保管時は引き蓋は抜いておく
引き蓋を差し込んだまま保管していると、感光を防ぐためのテレンプと呼ばれる緩衝材が潰れて光線漏れを起こす可能性が出てきます。すぐにそうなるとは限りませんが、可能性を潰しておくにこしたことはないでしょう。ちなみにテレンプは交換可能です。

作法も含めて、今のカメラには無い魅力が詰まっているハッセルブラッド500C/M。かつての高級機も今では比較的リーズナブルに買うことができます。
市場に残る個体数も少なくはないので、いい個体を探し求めて500C/Mとともに中判フィルムの世界のい足を運んでみてはいかがでしょう。

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