数年前からペットとして人気を高めている「爬虫類」。大きく分けてトカゲ、ヘビ、カメ、ヤモリの4種類のうち、ここでは難易度が高いと思われている「ヘビ」について解説していきましょう。
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わざわざヘビをペットとして飼うことの魅力とは
多くの方がヘビを敬遠したくなるのは、一説によると「ヘビは危険な生き物」という認識が遺伝子に刷り込まれているからとか。そんな遺伝子絡みの“枷”から脱却できると、ヘビが持っているさまざま魅力に気付くことができます。
1.美しいカラーバリエーション
自然界でも非常に美しい体表持つ種類が多いヘビ。ペット用のヘビとして販売されているものもそうで、むしろペット用として掛け合わせて、自然界ではなかなか見られないカラーリングのヘビもたくさん販売されています。トカゲやヤモリもそういった傾向にあって、「モルフ」と呼ばれる個性的なカラーリングによって価格も大きく変動します。
ヘビの種類や性格によっても異なりますが、基本的には自ら体表を綺麗に保ってくれるため常にモルフが楽しめるほか、脱皮をするとそのポテンシャルがより引き出されて、非常に美しい姿を見ることができます。
2.得も言われぬハンドリングの感触
ヘビを触ったことがない人がその感触を想像することはほぼできません。それぐらい特殊な肌触りを持つヘビ。ヌルっとした湿気を帯びた感触を想像していると、その真逆で驚きます。
基本的にはサラリとした肌触り。乾燥地帯のヘビは鱗が大きめでしっかりしているため硬質感も味わえます。湿気を好むヘビは鱗が小さめで繊細なさわり心地。シルクのような感触にも思えます。そこに生き物としての動きが加わって腕にスルスルと巻き付いたり締め付けてくると、その触感がさらに際立ちます。
3.迫力の捕食シーンが間近で見られる
ヘビの醍醐味はやはり餌やりのとき。よく見ると可愛らしい顔したヘビが大きな口を開けて餌を丸呑みする様子は、何回見ても迫力があります。餌は冷凍ネズミが基本。ヘビを飼うための最大の障害は餌にあります。
ヘビを飼うための基礎知識
・飼うための設備の規模が小さくてすむ
ヘビは基本的に夜行性なので、トカゲやカメなどのように紫外線が必要ありません。ホットスポットもライトではなく加温シートが好ましいです。
ほとんどのヘビが省エネ行動なため、大きく動くスペースを設けなくてもOK。とぐろを巻いた状態のおよそ2~3倍の面積を用意してあげれば事足ります。大体長辺45〜60cmのプラケースに1m〜1.5mのヘビを飼うこともできます。
1.5mと聞くととてつもない大蛇を想像してしまいますね。実際にはとぐろを巻いていて、ナミヘビであれば両手のひらで収まるサイズ感です。
・毒蛇はいない(一部を除く)
必ず聞かれるのが「毒は大丈夫なのか」ということ。ペットとして販売されているヘビの9割8分は無毒です。有毒な種類に噛まれても腫れる程度。体質にもよりますが、重症化するような猛毒は持っていません。
・噛まないやつが多いけど、噛むやつは噛む
ヘビは基本臆病なので警戒心の強さから噛むことはあるし、匂いに敏感なのでそれにつられて噛むときもあります。
ヘビに限らず、爬虫類は懐きません。相手の意思に頼らず、噛まれない準備をしておけば、噛まれる心配はほとんどないでしょう。
・人工飼料は無い
最近、ペットブームに合わせて人気のヤモリやトカゲの人工飼料が根付き始め、生きた虫を与えなくてもいい個体もかなり増えました。でもヘビは未だ冷凍ネズミ一択。場合によっては冷凍うずらやひよこもアリですが、基本的にはヘビにとっての完全食であるネズミが良いとされています。
愛玩動物としても人気のネズミを餌として扱えるのか、冷凍庫に保存することに抵抗がないか、場合によっては冷凍ネズミを切ったり潰したりする勇気がないのなら、残念ですがヘビを飼うことは諦めたほうが良さそうです。
ヘビを飼うためにこれだけは注意したいこと
・脱走
アミメニシキヘビという大型のヘビが脱走したことがありました。たしかにアミメニシキヘビは特定動物に指定されていて、今となっては許可をもらっても飼うことはできないヘビです。が、特に毒は持っていないですし、力が強いとはいえ、積極的に人を襲うほどアグレッシブな性格もしていません。
近隣のペットや子供が飲み込まれるのでは? と、心配する声も上がっていましたが、飼育下のアミメニシキヘビではほぼありえないことだと思います。
それだけ世間的に強い偏見の目がつきまとう生き物ということ。ヘビに限らず爬虫類はどんなに小さくても脱走すれば大騒ぎになります。他の愛好家の迷惑にもなるので、くれぐれも逃さないようにしましょう。
・身の丈にあったサイズのヘビを飼いましょう
ヘビ以外にもいえることですが、手に追える種類を選んで買いましょう。とくにヘビは、女性の太ももくらいの太さになるヘビが容易に飼えたりして、飼育ゲージを壊すほどの力を持っていたり、餌もウサギやブタといった大きなものを要求されることがあるので大変です。もしそれが獰猛な性格だったら…。殺されることはないにしても、ただではすみません。
さほど大きくなくても、気の強い個体は避けたほうがいいです。1mクラスのナミヘビでも、噛まれれば小さな注射くらいの痛みはあって、噛まれるかもしれない恐怖と向き合うことは飼育へのモチベーションにも関わってきます。それがツリーボア系の牙が長いタイプになった場合、噛まれた場合には病院送りになる可能性もあるので、扱いに自身がないときは可能な限り避けましょう。
・拒食に臆さない
神経質な子だと急に餌を食べなくなって、それが長期に渡ったりします。メジャーなボールパイソンなどでよく見られ、飼い主の精神力を削ってきます。ヘビは主体的にご飯を食べ、それに合わせて生きていく力を持っているので、拒食になったからといって簡単に死んだりはしません。無理にご飯を与えたりしたらそれがストレスになって逆に死んでしまったりします。
ヘビは半年〜一年食べなくても生きていられたりします。1ヵ月程度の拒食であれば、ヘビを信じて世話をしたいのをグッと我慢。痩せてきたと思ったときでも餌を受け付けなかったら、それなりの対応を始めましょう。
オススメ品種
コーンスネーク
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ペットヘビとして最もメジャーなナミヘビ・コーンスネーク。大きくなっても1.2〜1.5m程度でサイズ感は手頃。顔つきは可愛らしくもあり、精悍さも持ち合わせているので、万人受けしやすいヘビといえます。
モルフも豊富。キレイめから渋めのものまで幅広く揃っているので、好みの子と必ず出会えるでしょう。
ボールパイソン
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コーンスネークと双璧をなす人気種ボールパイソン。ボールのように丸くなることからその名が付けられています。
“パイソン”ということはつまりニシキヘビ。ただし、ボールパイソンは1m~1.2mほどにしかならないので、きっと10mくらいを想像しているニシキヘビよりは遥かに小さいです。ニシキヘビやアナコンダだからといってすべてが大きいわけではありません。ただし、太さは出てくるので成長するとかなりボリュームのある姿になります。
コーンスネークと同じくモルフは豊富。ただ、モルフによってはかなり高額になったりします。
臆病で、拒食になりやすい種としてもおなじみ。餌のサイズがコーンスネークに比べて大きいので、アダルトマウスのLやラットくらいまでのサイズを覚悟しておくといいでしょう。
このほかにもカルフォルニアキングスネークやシシバナヘビといったメジャー種、またペットショップやイベントにいくともっと多くのヘビが販売されていますが、今回はこの2種まで。いずれもペットヘビとして確立されていて育てやすく、ヘビの醍醐味も充分に味わえる種類です。
知識と経験を積んで、さらなるヘビ飼育の世界へと進むことをオススメします。