5分で解説!

5分で解説! 今さら聞けないカメラの話〜ローライフレックス2.8F〜

ドイツのカメラメーカー・ローライが手掛けた名機「ローライフレックス2.8F」です。

ローライといえば二眼レフ機。レンジファインダーや一眼レフ、ハッセルブラッドのようなスタイルの中判カメラを手掛けたりもしましたが、もっともヒットしたのは二眼レフシリーズで、そもそも世界で初めて二眼レフ機を手掛けたのがローライであり、ローライフレックスシリーズはローライを代表するシリーズかつ二眼レフの代名詞的存在となりました。

ローライフレックスシリーズは分類がわかりづらく、ローライコードや、4✕4フォーマットの通称“ベビーローライ”といった異端なタイプも含めると非常にややこしい。
とりあえず、“F”がつくものが後発にリリースされた最高峰モデルでレンズが異なる4種類(F値違いとメーカー違い)が存在すること。ローライコードは普及種で、ベビーローライは小さくて今は写真を撮ることがかなり難しいフォーマットのカメラであること。GXやFXといったローライフレックスはやたらと高いけど、本家本元が倒産した後にリリースされたカメラであること、などを知っておけばとりあえずOK。

ちなみに、ローライの創業者はフォクトレンダー出身。フォクトレンダーは、今でこそコシナが手掛けた、ツァイスより安価なドイツブランドレンズといったイメージを持たれてそうですが、歴史は長く、ライカ創業よりもはるか昔の18世紀から存在し、もともとオーストリアでドイツでもないんですけど、そんなフォクトレンダーの商標を一時ローライが所有していたことを考えると、なんか因縁めいた関係性が見えて面白いですよね。

フォクトレンダーについては、おいおいピックアップしていきます。

▲上部がファインダーのウェストレベル方式が主流。プリズムファインダーに差し替えれば一眼レフのように正像で写真が撮れます。ちなみにウェストレベルタイプのレフ機は上下は合っていても左右は逆像です。つまり、レフ機能が無い大判は上下も逆ということ。さらに補足するとレフ機のレフは光を反射する“レフレックス”の意味なので、ミラーを取ったミラーレス機は、レフ機ではありません。「ミラーレス一眼レフ機」は間違いなので、指摘するともれなく嫌な顔をされたりするのでご注意を
▲上がビューレンズで構図を決めるだけのレンズ。下が撮影を担うレンズです。これを一つにしたのが今の一眼レフというわけです。この機種のレンズはシュナイダー製クセノタールF2.8。主流はカールツァイス製プラナーF2.8で、玉数が多く人気も高いです。それぞれ75mmF3.5のタイプも存在します。画角が少し広く、レンズがちょっと暗くなった分軽くて扱いやすいです
▲正面2つのダイヤルを回すことで絞りとシャッタースピードを調整できます。数値は上部から両方とも確認可能
▲がらんどうとしてますが、フィルム装填のための精密なギミックを搭載しています
▲この金属のローラーの間にフィルムを通して装填することで、圧力を感知し、フィルムカウンターに合わせて巻き上げレバーが空回りする「オートマット機能」が搭載されているんです。1970年代に機械構造の力だけで実現させているのって、すごいことだとおもいませんか?
▲ビューレンズの上部が電池のいらない露出計。だめになっていることが多いけれど生きていたらラッキー。白い被せものはカバーではなく、ディフューザー。これをつけることで入射光に切り替えることができて、白や黒に露出径が引っ張られにくくなります
▲露出計のメーターは本体左側。ピントレバーと一体型になっています。結構割れていたりする部分
▲シャッターをチャージして押すと、見ために反して非常に静かな「カチ」って音がなるだけ。ローライフレックスはレンズシャッターなので、シャッターショックがありません(自分の挙動のブレくらい)。しっかり構えればスローシャッターも切れたりします

一周回ってセンセーショナルな見た目のローライフレックスは今もなお人気継続中。

かつてはカメラの主流を担っていた二眼レフ機なので、それに伴うギミックや、アクセサリー類もあったりするので、そういったものに注目を集めるのも面白いですよ。

5分で解説! 今さら聞けないカメラの話〜ハッセルブラッド500C/M〜

スウェーデンのカメラメーカー・ハッセルブラッドを代表する中判カメラ「500C/M」。
1970年に、500Cのマイナーチェンジ機種として登場し、以後ハッセルブラッドを象徴するカメラとなります。

ちなみに、ハッセルブラッドといえば宇宙飛行に持ち込まれたカメラとして有名。
500C/Mの前身である500Cを改造したものを使い、良好な結果を生んだことからその後もハッセルブラッドのカメラが使用され、月面には撮影を終えたハッセルブラッドの特製カメラ12台が残されていると言われています(重量制限のためにフィルムマガジンだけ取り外して、レンズと本体はそのまま)。

500C/Mはシャッタースピード最高速1/500のレンズシャッター式。
それまで1600Fや1000Fといったもっとシャッタースピードを稼げる機種をすでに作ってはいたものの、こちらは今の主流のカメラと同様のフォーカルプレーンシャッター機で、当時のハッセルブラッドでもストロボとの同調速度が1/90ほど。ストロボとの同調性能が求められていた時代において、500Cおよび500CMシリーズは非常に重宝し、当時のプロカメラマンの憧れとも言うべき超高級カメラとして君臨しました(当時大卒初任給4万円の時代に、システムを組むと軽く100万超え)。

専用レンズ、専用ボディ、専用フィルムマガジンの3つに分かれている分、余裕のある構造となっていて丈夫。もしカメラが不調になってもいずれかを変えれば解決できたりするし、同じVシリーズであれば基本共用可能であったりと、システムとして非常に理にかなった構造になっているのが特徴。

シャッターチャージレバーやフォーカシングスクリーンを交換できるなど、自分に合ったカスタマイズができる構造にもなっていて、それによってさまざまなアクセサリーが存在するので、それらに注目するのも面白いです。

また、ハッセルブラッドならではのメカニカルな構造も魅力。今はあまり馴染みのないレンズシャッター式であるがゆえの独特な作法があったり、薄い金属製の仕切りの引き蓋が閉じているだけでシャッターがまったく切れなくなる仕組みは、中判カメラを知っている人にとっては当然ですが、知らない人には非常に衝撃的。
引き蓋を抜き忘れて、シャッターが切れなくてパニックになる経験はみんなが必ず通る道なので、ぜひそういったハッセルあるあるもぜひ体感してほしいですね。

▲Cレンズの80mmF2.8。絞りとシャッタースピードの設定をここで行うんですけど、連動して被写界深度の範囲(一番手前の赤い爪みたいなやつ)もうごいて示してくれます。数字は刻印されていて、これよりも新しいCFレンズになるとプリントになるので、作りを気にする人はCレンズ、性能重視ならCFレンズを選ぶと良いかもしれないですね
▲Cレンズの場合、絞りを変えたいときにはシャッタースピードのダイヤルを少し浮かす必要があって面倒。つまりは絞り優先みたいになっていて、そのまま回すと絞りとともにシャッタースピードも一緒に変わってしまいます。CFレンズではそのあたりもっとフレキシブルな構造になっています
▲噂の薄い金属製の仕切りである引き蓋。これが入っているとシャッターが切れません。これを抜けばシャッターは切れますが、今度はフィルムマガジンが外れなくなります。感光防止のためですね。ちなみに、手前の曲線状の赤いラインはフィルム残量のメモリ。新品状態だと白くなっていて、フィルムを送るごとに赤くなっていきます
▲フィルム送りとシャッターチャージを行うノブ。これは初期型の金属製。後期型はプラ製となり、速射性を高めたダイヤル式などいくつかバリエーションあり。質感重視で金属製をチョイスしています。ちなみに、シャッターをチャージしないと撮像が見えない構造になっています。シャッターがチャージされていない合図ですね

独特な構造ゆえの“お作法”を上げるとしたら…?

1.基本的に、すべてくっついたカメラの状態で動かしたほうが安全。
3つのブロックを連動させた構造なので、個々の状態で動かすと不具合が起こりやすいです。例えば、レンズ交換の最中にボディ側のシャッターを動かしてしまった場合、そのままレンズを取り付けようとすると破損する恐れがあります。両方ともシャッターがチャージ済みor切った状態で揃えて交換しましょう。おそらく一番神経を使うところ。
マガジン側でも撮影枚数が狂ったりしますが、そこまで大きな問題にはなりません。

2.スローシャッターは押しっぱなしにする
シャッターボタンの駆動と完全連動しているのはバックシャッターのみ。押したときのみレンズシャッターが駆動し、自動で開閉します。つまり、バックシャッターの開閉スピードがレンズシャッターを超えてくると、レンズシャッターが閉じる前にバックシャッターによって露出が切られてしまうことになります。シャッタースピードが1/60秒を下回るときは、押し続ける意識をしましょう。

3.保管時は引き蓋は抜いておく
引き蓋を差し込んだまま保管していると、感光を防ぐためのテレンプと呼ばれる緩衝材が潰れて光線漏れを起こす可能性が出てきます。すぐにそうなるとは限りませんが、可能性を潰しておくにこしたことはないでしょう。ちなみにテレンプは交換可能です。

作法も含めて、今のカメラには無い魅力が詰まっているハッセルブラッド500C/M。かつての高級機も今では比較的リーズナブルに買うことができます。
市場に残る個体数も少なくはないので、いい個体を探し求めて500C/Mとともに中判フィルムの世界のい足を運んでみてはいかがでしょう。

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5分で解説! 今さら聞けないカメラの話〜元祖高級コンパクトカメラ・ローライ35〜

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ローライ35は、かつて二眼レフ機で一斉を風靡したドイツ・ローライ社が作った、高級コンパクトカメラ。
この機種とともに、当時巻きおこったコンパクトカメラブームを牽引しました。

写真はシンガポール製の初代モデルですが、初期のモデルにドイツ製のものがあって、ドイツ製はファインダーがガラス製でフィルム室を開閉するためのプレートの形状が違っていたりします。
こだわる人はドイツ製を選ぶし数も多くないので、自ずと取引価格は高くなっています。

製造元以外にもとにかくバリエーションが多いのが特徴。明るいゾナーのレンズが搭載された「ローライ35S」や初期モデルをリファインした「ローライ35T」、機能を一部オミットした普及種、露出計の表示を変更したモデル、各色替え、記念カラーなど膨大にあって、基本的な形は変わらないためコレクション性も高いです。

高級コンパクトカメラの由縁は超コンパクトでありながら機械式という仕様にあります。
見た目に反してずっしり重く、ローライが持つテクノロジーの結晶といった手応えを感じることができます。

ローライが手掛けたカメラには繊細さのある精密感があり、それはライカやハッセルブラッドのカメラとはまた異なる、ローライならではの質感といえます。
小さなローライ35にももちろんその意匠は盛り込まれているので、凝縮されたローライのものづくりをじっくり感じることができるでしょう。

▲シンプルな軍艦のデザイン。シャッターにはねじが切られていてレリーズを繋げることができます。左のレバーはフィルムの巻き上げレバー
▲設定したF値に応じた絞り羽根に代わったらレンズがしっかりロックされた合図。絞り羽根の形状は六角形
▲フィルムの感度を設定するダイヤル。下の銀の部分を押しながら回します。それをしないで回すと壊れてしまうので注意
▲シャッタースピードダイヤルはロック機構などはなくそのまま回してOK。前面にはフィルムの種類を示しておくダイヤル付き
▲ファインダーは素通しで撮影範囲だけが記されている状態。一眼レフなどと違ってレンズを通した撮像を見るわけではないので、レンズにフタをしたままでも気づかずに撮影できてしまう。ただ、ローライ35はレンズを繰り出さないとシャッターが切れないギミックが盛り込まれているので、そういったミスは起こりづらい
▲カメラの底面に三脚ネジ穴のほかにフィルムの巻き戻しクランクやホットシューを配置するという発想。三脚ネジ穴の窓はフィルムのカウンターになっている。ギミックをギュッと詰め込んだ箇所だが、無理がなくみえるのはデザインに基づいた配置によるものだろう
▲フィルムを抑える板を開けるとレンズの裏側や精密な機械仕掛けも垣間見える。お分かりの通りレンズシャッターでシャッター幕は無い。フィルムを通すときにはこの状態にしてフィルムを巻かないと大変なことになる。

使用するフィルムはもちろん35mmなので、いまでも充分運用可能。
フィルムとはいえ、このサイズでフルサイズの写真が取れると考えるとローライの技術力の高さには驚くばかりです。